参考文献(正金関連)

『キメラ 増補版』(2012.6.28 tanakomo)

 

先日の「横浜正金銀行」の話のためにじっくり読み返し、そして出席者からも質問を受け、さらに先日「満州国についてよくわかって、そんなに分厚くなくて、安く手に入って、思想的にも偏っていない本はないですか?」なんて問い合わせがあって、「まさにズバリの本があるよ」って感じで推薦しまくっている本がこれです。

博論書く時にも重宝しました。フナツには「足を向けて寝られない」本がたくさんありますが、この本もそのひとつです。

もちろん、満州国に関する専門書、研究書、論文は数多存在するわけですが、こんな本が新書で出るんだなぁと、すごいよなぁ、日本の出版界は・・と思います。

みなさん、いろんな出版社が新書を出していますが、やっぱり質量ともにすごいのは「中公新書」です。ちなみにフナツは「中公文庫」も好きです、いい本たくさん文庫に入ってる。

ま、それはさておき、この本のもう一つの良さは、増補版に入っている「補章 満州そして満州国の歴史的意味とは何であったのか」(317ページより)です。ここだけ読んでもいい。

ちょっと引用します。
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本書は「満州国の肖像」という副題にありますように、そもそも満州国という国家の形成から始まってその変遷・変容を経て壊滅に至る歴史的過程を、主として政治学・法政思想史的観点から解明することに主眼を置いて執筆したものでした。そのため、満州や満州国の歴史的意義を、その前史や第二次世界大戦後の問題、さらに満州についてのイメージなどを含めて総体として知りたいという読者の方にとっては、紙幅の制約もあり不充分なものであったと思われます。
また、新書という本の性質上、その問題に関するガイダンスとしての役割を果たすべきことも当然求められる要請であることは間違いありません。そこで、以下では、想定問答という形式を採りながら「満州そして満州国の歴史的意義とは何であったのか」を考えていただくにあたって、読者が抱かれると推定される御疑問に対し、簡略に私見を述べてみたいと思います。(318ページ)
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ということで、問1から問24までさまざまに問いと答えが用意されています。

へぇー、とか、ふむふむ、って読んでもらえばいいです。

日本の近現代史を知ることの重要性をこれからもずっと訴え続けていきたいと思ってます。

 

 

 

 

『円の誕生』(2012.6.10 tanakomo

 

みなさん、なぜ、そしてどのように「円」ができたかご存知ですか?

周知のように、江戸時代は「両、分、朱」ですね。豆板銀があったり黄金の小判があったり、銅銭があったりしました。そして、お金の数え方は4進法でした。

それがどうして円、銭、厘となったのか、10進法になったのか?

おまけに、これ答えられる人は少ないと思うけど、なぜ日本円のマークは<Y>なのか?なぜ " Yen " なのか?

読み方は " en " でしょ?

さらに、江戸時代のお金は丸くありませんでした。なぜ明治から丸くなったのか?

江戸時代の大金持ちの両替商はどこにいってしまったのか?
「お前もワルよのう、越後屋」「お代官様こそ」の大商人たちはどこへいってしまったのか?

通貨が変わる、今まで持っていたお金が使えなくなる、これはすごいことです。さて明治政府は・・?

他にも、幕末と明治の一時期、日本から大量の金が流れ出して、日本の金の保有量がとても少なくなったことがありました。それはなぜ?

などなど、いろんなことがこの本に書いてあります。

実に緻密に、実証的に、さまざまな資料が(数字も)織り込まれて書かれた本です。(行間も狭いけど・・)

名著です。

副題が「近代貨幣制度の成立」です。フナツが何度も何度も読み返している本です。

 

 

 

 

『日露戦争、資金調達の戦い』(2012.4.18 tanakomo

 

以前、横浜正金銀行に関して書き込みをした記事がありました。

簡単にまとめられているので、まずこちらから。

 

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毎年横浜で某銀行さんのために歴史の話をします。
某銀行の前身である「横浜正金銀行」の話です。
なぜ横浜かというと、その本店跡地が現在の神奈川県立博物館になっているのです。

戦前は、日銀か正金かと言われたくらいのすごい銀行でした。
国内は日銀、世界では正金って感じですね。世界各国に支店があったのです。
ところが植民地の金融を一手に引き受け、財政のお手伝いをし、為替を発行したり、今日紹介する本にあるように、日露戦争の戦費調達のための外債募集などを手掛けたりしたので、戦後GHQからにらまれ、戦争に加担したなどと誹られて、ほとんど歴史の表舞台から姿を消しました。教科書でも習ってないですよね。

正金を語ることは、戦前の国際金融の歴史を語ることでもあるんです。