ミステリ(日本)

『血の轍』(2014.10.8 tanakomo)

 

以前ここで紹介した『震える牛』(エンタメその他日本)を覚えている方はいらっしゃるでしょうか。

狂牛病と業界の内幕を描いてなかなかの衝撃作でした。それ以来、著者の相場さんのことを密かに注目していました。

 

この作品もとてもおもしろいです。

 

今度は「警察小説」です。

えーと、「警察」という言葉にアレルギーがある人がいるかもしれませんが、ミステリを書こうと思ったら「犯罪に一番近いところ」「人間の欲望や愚かさがリアルに見えるところ」つまり警察とその周辺には題材がたくさんありますよね。

 

もう最初っからバンバン業界用語が出てきて臨場感いっぱい。

プロローグのところからぐんぐん引き込まれていきます。

 

職場(署内)の雰囲気もとてもリアルに描かれていて、相場さんってもと刑事さんなの?と思えたくらいです。

 

さらにこの小説がおもしろいのは、犯罪を追うその経緯だけでなく、警察内の争いを描いているところです。

 

たとえば、それぞれの県警(たとえば岐阜県警と愛知県警など)が、県をまたいだ犯罪をどんなふうに獲り合うか(邪魔をし合うか)、警視庁(東京都を管轄)とそれぞれの県警の争いなどがこれまでもたくさん小説に書かれています。

 

そしてキャリアとノンキャリアの対立、キャリア同士の内部抗争、こういったテーマは、みなさんも良くご存知の映画「踊る大走査線」にも描かれていますね。

 

この小説で描かれているのは「刑事」と「公安」です。

犯罪者を追う「刑事」と、日本という国の公の安全を守る「公安」の対立です。

 

それで思い出したんですが、まさにタイムリーなニュースがここ数日テレビや新聞を賑わせていますね。

 

イスラム国に行って共に戦いたいと思っている大学生たちがいて、取り調べを受けているという事件がありました。「私戦予備・陰謀罪」です。

 

まさにここで動いているのが「警視庁公安部」です。

 

 

私戦予備・陰謀罪(刑法93条)というのは、外国に対する私的な戦闘を計画・準備する行為(予備罪)、二人以上で合意して計画する行為(陰謀罪)を処罰するものです。

 

つまり、テロ行為や国家転覆につながる恐れのある行為を取り締まる「公安」が出張ってきます。

 

犯罪者そのものを摘発したい刑事局と、犯罪者は泳がせて計画そのものをつぶしたい公安部では思惑が違ってきます。捜査方法も犯人逮捕に至る経緯も違えば、同じ警察でありながら考えていること、思考経路がまったく違う。

 

一人の犯人をそのまったく違う組織(同じ組織内の)が、それぞれに先に獲られないように、渡さないように、とデッドヒートを繰り広げます。獲物を横取りされたくない猟犬たちといってもいいです。

 

おもしろいです。

 

相場さん、また新境地を開いたって感じです。

相場さんの書く警察小説、目が離せません。

 

 

 

『獣眼』(2014.9.3)

 

久々の大沢さん長編で新しいのが出たってことで出張前に仕入れて、行き帰りの新幹線で一気に読みました。

 

新しいキャラの誕生ですね〜。なかなかいいです。

主人公の仕事はボディガード。女性にもモテるし、格闘技が関節決める古武術というのもなかなか渋い設定です。

日本で仕事をしているボディガードさんなので拳銃のドンパチはなし。導入シーンもカッコいい。

 

物語は(本の帯を少々短くまとめて引用すると)、

保護する対象は十七歳の女性、期限は一週間、さて孤高のボディガード・キリに課せられた任務は、って感じです。

 

大沢さんお得意のハードボイルドミステリです。

いろんな要素が入っていて楽しめました。

 

さて、いつも書いているのでくどいようですが、書かずにはいられない・・・。

 

今回、本の題名のところをクリックして飛べるサイトは「オンライン書店Honya Cllub.com」にしました。

フナツもたいていここを使って本を注文しているところです。

 

これまでは簡単にアクセスできるようにアマゾンのサイトのリンクを貼っていましたが、もうアマゾンのサイト貼るのをヤメます。

 

カスタマーレビューがひどい!!

 

これまでにも書きましたが、いったい自分を何様だと思っているのでしょう。

・「途中で何度投げ出そうと思ったか」←投げ出せばいいじゃん、なんで文句言いながら最後まで読むんだろ??

・「退屈な展開がだらだらと続きます」とか「もうどうでもいいけど、とりあえずもったいないから早よ読み終わろ」←同上

・「こんな筋道通らない話が面白いなんて思いません。」←同上

 

おもしろくないと思ったら読むのをやめればいいのになぁ・・・。

でもって何でそれをカスタマーレビューに書くのでしょう??

まあ、書くのは自由だし、ダメな作品だと書くこと、それこそがカスタマーレビューだって言うんでしょうね、こういう人たちは。

 

フナツはとてもおもしろいと思いました。

好き嫌いは人それぞれなんだから、文句言うより別の本を読めばいいのになと思います。

 

あ〜、おいしかった、って人が食べ終えたところに、「けっ、こんなまずいもんよく食えるな」「こんなん食うやつらの気がしれねーよ」って大声で言われたような気がしました。まあ、いいんですけどね・・。人それぞれだから・・。

 

もちろんフナツは、フナツが好きなものはみんなが好きになるはずだ、フナツがキライなものはみんなキライにならなくてはいけない、なんて決して思っていません。

 

ただ、嫌いなものを嫌いだと大声で言うと世間が狭くなる、ということは身にしみてわかっています。

 

あ〜、なんか愚痴みたいになってきたのでやめます。

読んでのお楽しみということで。

 

 

 

 

『地層捜査』(2014.8.5 tanakomo)


佐々木譲さんの「特命操作対策室」シリーズが文庫になりました!

本の帯には「警察小説の巨匠 新シリーズ開幕」とあります。

「特命捜査対策室」というのは、いわゆる「お蔵入り」、解決されないままになっている事件を再捜査しようというセクションです。

再び本の帯から、
「たったひとりの特捜班。相棒は退職刑事。若き刑事は町に眠る秘密と罪を追う」

派手な銃撃戦や猟奇殺人ではなく、サイコパスも出てこない。いわば地味なミステリです。

フナツは、ちょっとそういう派手というか残虐なシーンてんこ盛りなミステリはあまり好きじゃないので、こういうのがいいですね。

特命捜査対策室に配属になった(少々問題を起こしてトバされた)若い刑事が、解決されていなかった15年前の老女殺人事件を、当時の担当刑事と一緒に、もう一度丁寧に掘り起こし関係者の話を聞き、徐々に真相へと近づいていく、そんな筋立てがなかなかいいです。

そして、場所は都内の繁華街に近いところなんですが、その場所の歴史、戦前から戦後、昭和から平成にかけて徐々に変わっていった町の風景や状況なども丹念に書き込まれており、こういう仕掛けのミステリもいいなぁと思いました。

本の裏表紙にも、
「静かな余韻を響かせる警察シリーズ」とあります。

シリーズ第2作が今から楽しみです。

 

 

 

 

『絆回廊 新宿鮫Ⅹ』(2013.9.11 tanakomo

 

大沢在昌『新宿鮫』シリーズ最新刊です。

さきほど、読み終えました。おもしろかったぁ・・・。

今日は朝から所用で飛び回り、お昼に締め切り間近の原稿やレジュメその他をやっつけ(あ、まだ某学校のテスト採点をやってない、まあいいや、今夜やろう・・・)、その合間にブログを書き、さきほどやっとお昼ご飯を食べた(4時!)ところです。

でもって、えーと、ちょっとお行儀悪くて申し訳ないのですが、フナツはご飯を食べながら本を読むのが大好きで、今日のランチのためにこの小説のラストをとっておいたのです。

昨日までにほとんどを読み終えて、ラストは大事にとっておいて・・・なのです。好きな小説のラストは誰にも邪魔されない静かなところで、と決めています。

ラストの一番いいところで「あ、電車降りなきゃ」とか、「うーん、もう仕事に戻らなきゃ」っていうのはイヤですもんね。

まあ、こんな話はいいですね。延々と本と関係ないことを書いてしまいそうなので、話を戻します。

『新宿鮫』、10作目です!!
もうそんなになるのか・・・、って感じです。

どの作品も、大ベストセラーってわけでもなく、「鮫」ファンの人には絶大な支持を受けてはいるけれども、一般の人たちにはあまり知られていない渋い作品群、言ってみれば、70点から80点の作品を10作続けているという感じです。

今回は少々趣が変わり、鮫島がけっこう追い込まれます。
あらすじを書くのは控えますが、孤独な一匹狼を際立たせる筋立てが展開されるその中に、実は鮫島のことを支える人たちがクローズアップされてくるという絶妙の配置。

ストーリー終盤では、「ええっー!」という展開あり、しみじみ泣かせるシーンありで盛り上げ、そして次回への含みを持たせるというラストシーンでした。

良質の警官小説が読みたい人、佐々木譲さんの道警シリーズ(道警とは北海道警察のことです)と合わせて、この『新宿鮫』シリーズを推薦します。

10冊ありますから、読み応えがありますよ。

(いつものことですが、アマゾンのカスタマーレビューを書かれているみなさんはきっとたくさんの本を読まれて目の肥えた方々ばかりみたいなので、そしてどうしてこんなエラそうな物言いができるのだろうという方が多いので、あまり参考にしない方がいいと思います)

 

 

 

 

『ブラックチェンバー』(2014.4.21 tanakomo

 

大沢在昌さんの新作です。

全体の構成はいつもの大沢さん得意な犯罪もの(「クライムサスペンス」と裏表紙にあります)なんですが、いつもの警察とヤクザと国際的犯罪組織との抗争にプラス新キャラ、というか新しい工夫がされていてなかなかおもしろかったです。

で、以前にもここで書いたことがありますが、フナツは本の紹介をアップするときに、本の表紙のサムネイルも一緒にアップしたくて、フナツがいつも本を買う「本やクラブ」のサイトではなく、以下のようなアマゾン和書のサイトで本の紹介をアップしています。

でもって、何がキライといってこのアマゾンの読者レビューが、ホント「オマエ、何をエラそーにそこまで批判する??」という書き込みがイヤなんですが、不覚にもたまに読んでしまうことがあります。

みなさん、以前も書きましたが、「批判をするオレってカッコいい?!」と勘違いしている人間も多いので、そんな人間は相手にせず自分なりの本選びをしましょうね。

さっきも書きましたが、このくらいの値段で数時間、読むのが遅ければもっとたくさんの時間楽しませてくれる「おもしろい本」ってとてもいい娯楽じゃないかと思います。

身を削って創作活動をしている作家の方々とその作品をなんでそこまで批判する?と思ってしまいます。「こんなレビュー書かれてるなら、読むのやめよー」と思う人が出ちゃうだろ、とフナツは思ってしまいます。

まあ、いいです。
すいません、ちょっと感情が入ってしまいました。

 

 

 

 

『鏡の顔』(2013.4.10 tanakomo

 

大沢在昌さんの短編小説集です。

以前のブログから、そしてこのFBページでも、大沢さんの作品をたくさん取り上げています。けっこう大沢さんの小説はクセになるんです。ある期間読んでないと「あー、そろそろ読みたいなー、新作は出てないかな」なんてことになる作家です。

『新宿鮫』があまりにも有名ですが、実は大沢さんは「万年初版作家」と言われていた下積み時代がありました。初版作家というのは、出せば一定のファンがいてそこそこ売れるけど、いわゆる「重版出来」(「じゅうばんしゅったい」と読みます)がない作家、つまりこのくらいは売れるだろうという出版社の見込みしか本を刷れない、そしてその見込みの分だけで売上が止まって後は売れないという作家のことです。

出版社だって利益を追求する企業ですから、見込み以上に売れて、原価や経費を回収したその上で、さらに何度も刷を重ねて(最初に印刷した分が足りなくなって、何度も本を刷ること)、大儲けをしたいわけですね。

まあ初版作家というのは、出版社にとって確実な収入源には違いないのですが、そんなにうま味がないタマと思われているわけですが、その万年初版作家が『新宿鮫』で大化けしたという経緯があります。

えー、何が書きたいかというと、寡作ではないということです。寡作の作家さんだと、全部著作を読み切った後の禁断症状がつらい。結局同じ作品を何度も読んだりします。

ところが、大沢さんはけっこう精力的に書いています。昔の売れなかった頃の作品もたくさんあるし(売れなかったといっても作品の質が低いわけじゃないです、単にマイナーだっただけ)、今も盛んに書いていらっしゃる。いろいろと楽しめるわけですね。

でもって、あー、やっと本の紹介です。

この短編集は、大沢さんを知らない人がわざわざ長編を読まなくても大沢さんの魅力を垣間見ることができる、そんな本です。さまざまな風合いを持ったいくつかの作品が収められています。

それぞれの作品の発表時期はまちまちで(実はフナツも一度読んだ作品がほとんどなんですが)短いながらも、大沢さんの魅力が詰まっている本だといえます。

ちょっと裏表紙から引用します。
***
鮫島、佐久間公、ジョーカー・・・・・ベストセラー作家・大沢在昌の人気キャラクターが勢揃い。「人にプレゼントしたい短篇集になった」と著者自身が語る傑作集。
***

この本をきっかけに大沢さんのファンが増えることを期待して・・。

 

 

 

 

『夜にその名を呼べば』(2012.12.11 tanakomo

 

最初は緊迫、次に考えさせ、最後は息もつかせずラストへ。
そして読後感、しみじみいいなぁって感じです・・。

東芝ココム事件、東西冷戦の時代から物語は始まります。

おっと、そのへんは興味ないから、って決めつけないでください。物語の伏線なんです。

日本のメーカー、東ドイツそしてヨーロッパなどのビジネスマンがからむ産業スパイのミステリーかなと思いきや、物語は中盤から舞台も時期も一転して、「そして誰もいなくなった」といった一種密室ミステリーの様相を呈します。具体的に密室というわけではなく、小樽という街の中に閉じ込められた当事者たちという密室です。

これ以上書くと、どんな形でもネタバレになってしまうので、ぜひ「哀愁を帯びたミステリー」といったジャンル(?)が好きな人にはお勧めします。

少々きわどいシーンもありますが、残酷なシーンや圧倒的な暴力とその結果、なんていう描写はありません。(主人公の運命そのものが残酷というのはありますが・・・)

最後の数ページがせつないです。(うー、書きたいけどガマン)
そして謎解きはギリギリまで伏せられています。

きっとミステリー好きにはじゅうぶん楽しめる作品だと思います。

 

 

 

 

『罪深き海辺』(2012.8.30 tanakomo

 

このブログの読者の方々にはあまり人気がないようですが、フナツの好みでまたまた大沢さんの本を紹介します。

大沢さんの新しい文庫が出ました!

経済的に破綻寸前の港町が舞台です。

地域活性化のために市が建設した、カモメしかいないヨットハーバー。都会から人を呼び込むすべもなく、漁師町として生き抜くにも水揚げがどんどん減っていき若い人は都会へ出ていく。主要な産業もなく、高齢化していく町。

現代の日本にはよくある過疎地の風景です。

そういった辺鄙な港町に、莫大な財産をその港町に寄付して亡くなったという大地主の唯一の相続人と称する一人の男が現れるところから物語は始まります。

その相続人が訴えれば、亡くなった地主が寄付したとされる財産の半分は返却されなくてはいけない。その男が来たのを知ったさまざまな町の人間が動き出し、そういった人間が隠しておきたかった過去が明るみに出てしまう。

地元のヤクザ、そこに進出しようとする広域暴力団のフロント、そしてその土地を牛耳る有力者たちがその男の出現で蠢き出すわけです。

そして次々と起こる殺人事件と、それにまつわる過去の連続殺人事件の概要が明らかになるにつれて、物語はどんどんスリリングになっていきます。

ホント大沢さんストリーテリングが上手だね、って感じです。

 

 

 

 

『欧亜純白』(2012.8.12 tanakomo

 

いやあ、大沢在昌さんはすごい。

決してベストセラーってわけじゃないけど、大沢さんの著作を心待ちにしている読者を、かなり高いレベルで満足させれくれる作品を着実に出し続けています。

まさに本当のプロフェッショナルですね。

いろんな人が同じようなことを言ってます。「作家になるのは簡単だが、作家であり続けるのは難しい」と。

そういう意味でいえば、ずっと下積み時代が長く(本人曰く「万年初版作家」つまり初版が売り切れて増刷がかからない、初版の部数のみしか売れない人気のない作家だった時代が長い)、「新宿鮫」が売れて「初版作家」ではなくなってからも、おごることなくじっくり書いてきた大沢さんは、まさに作家の中の作家だとフナツは思います。

今回も、新宿を舞台に、ヘロインの流通をめぐって日米の麻薬捜査官や日本のヤクザ、ロシア・アメリカ・中国のギャングたちとのさまざまな対立や抗争を描いて、ぐいぐい読ませてくれます。

大沢さんのミステリは「はずれ」がないです。

 

 

 

 

『涙はふくな、凍るまで』(2012.3.20 tanakomo

 

大沢さんの前作品『走らなあかん、夜明けまで』の坂田勇吉クンが、またもやトラブルに巻き込まれます。今度は北海道でロシアマフィアと対決。副題が「“日本一不運なサラリーマン”を襲う怒濤のノンストップ・アクション」です。映画のようにお楽しみください。


北海道は小樽や稚内の様子、ロシアと日本の貿易のことなどもおもしろいです。

 

 

 

 

 

『眠たい奴ら』(2012.3.9 tanakomo

 

1998年の出版です。
約14年前ですね。現在はもう角川から文庫になっていますが、今手元にあるのは実業之日本社が出しているジョイノベルズのものです。

どうもこの本は買った時に一度読んだきりなようで、(概略は覚えてるんだけど)うまい具合に細かい内容を忘れていて、初めて読んだように楽しめました。(人間、忘れることはいいことだ)

内容は、東京のインテリやくざが、ひょんなことから大阪のコテコテの(暴力団担当の)刑事とともに、愛する人を救うために戦うという設定です。主人公もさることながら、この典型的な関西人キャラの刑事がとても魅力的なんですよね。

この作品は、大沢さんの小説をあえてジャンル分けするならですが、『走らなあかん、夜明けまで』のような、少々ユーモアをきかせた「まきこまれ系」のミステリといえます。
東京者と大阪人の対比というところも一緒です。ちなみに『走らな』の主人公は、カタギでまったくその気はなかったんだけど、なんだかんだで事件に巻き込まれてしまい、やくざと必死に戦うという筋立てです。

また、ここも大沢さんの上手なところですが、女性が(脇役の女性たちも含めて)とても魅力的に描かれています。もちろん男性から見た視線だとは思うのですが、女性にも決して不快じゃないと思います。

フナツはいつもおもしろい小説を読むとき想像するのですが、もしこの作品が映画化されたら主人公は誰それだな、ヒロインはあの人、この刑事はあの人だな、なんてイメージを膨らませることがあります。頭の中でうまく配役がはまると、文章からキャラクターが飛び出して頭の中で映像的に動き出すという楽しみがあります。

 

 

 

 

『鮫島の顔』(2012.2.24 tanakomo

このブログでよく紹介している「新宿鮫」が好きな人ならはまります。

ひとつひとつ読み切りなので、夜寝る前にワインでも飲みながら一作なんて感じで楽しめます。

詳しくは内容紹介を読んで見てほしいのですが、マンジュウというあだ名の(といえばわかるでしょうが)部長から見た鮫島とか、「新宿鮫」シリーズのこぼれ話など、他人から鮫島を見るとこんなふうに写っているんだなっていうエピソードや、「こち亀」の両津さんが出てくる話とかあってすごくおもしろいです。両津さんがどんなふうに「新宿鮫」とからむかは読んでのお楽しみということで。
「新宿鮫」ファンにぜひ、という一作です。

 

 

 

 

『走らなあかん、夜明けまで』(2012.2.13 tanakomo

大阪に一度も行ったことのない主人公が大阪の夜の街を走る!走る!

 

臨場感溢れる追跡劇!

ふとしたことからヤクザに脅され大阪の街をかけずりまわる羽目になる主人公、理不尽な仕打ちを受け、事態の過酷さを嘆きながらも、キレイなヤンキー姉御肌の女の人(実は著者の大沢さんがすごくタイプらしい)に助けてもらったりと、ドラマはスピーディに進んで行きます。

 

一気に読めます。というか、一気に読む方がおもしろい!
映画化もされましたよね。

 

 

 

 

『黒の狩人』(2012.2.2 tanakomo

いやぁ、久しぶりの大沢ワールド堪能です。
以前、exblogのほうのブログでは大沢さんの『新宿鮫』についてたくさん書いたのですが、これは『鮫』シリーズとはまた別の「新宿の警察」シリーズです。
実は、この本の前に『北の狩人』『砂の狩人』という2作があり、そのシリーズ3作目です。それぞれすごくおもしろいのですが、この『黒』が文庫化しているのを昨日とある本屋さんで見かけて、即買い、そして上・下巻ありますが、昨夜上を読み終わって「いけない、いけない、下を読み出したら寝られなくなるぞ」と我慢をし(もうその時点で夜中の2時だったのですが)、今日もったいないとは思いながらも、下を読んでしまってしまった(ヘンな文章でごめんなさい)のです。最初はじわじわと、そして上の途中あたりから、スピードアップ、下の中盤なんか読むのを中断するのが悔しくて、っていう極上ミステリの定番といってもいいような展開でした。
早速家の本棚を探して、「北」と「砂」をもう一度読もうと思っています。

 

 

 

 

『廃墟に乞う』(2012.1.29 tanakomo

以前、日本のミステリなら、ということで佐々木譲さんを紹介しましたが、佐々木さんが第百四十二回の直木賞を受賞された作品が文庫本になりました。
お得意の警察小説で短編が6作入ってます。
同じ主人公がさまざまな事件を解決していくスタイルで、舞台はおなじみ北海道警。適度な分量の読み切りなので読みやすいと思います。
フナツの趣味としては、受賞作そのものはそんなに好きじゃないんですが、この連作に流れる雰囲気はきらいじゃないです。

 

 

 

 

『笑う警官』(2011.11.5 tanakomo

海外のミステリを紹介したなら日本のもね、ってことで、第一弾は佐々木譲さんです。
えーと、日本のミステリの中には、人が無惨に殺されたり、けっこう陰惨な暴力行為を書いたり、病的な登場人物を執拗に描き出すようなものがありますが、はっきりいってフナツはそういうのは嫌いです。語られる事実の衝撃度より、登場人物の造形やストーリーの展開で楽しませてほしいと思う方です。
佐々木さんは歴史小説の分野でもたくさんの作品がありますが、ここで紹介するのは、映画化もされた「道警シリーズ」の一作目です。
内容紹介はサイトを見てください。実際に起きた北海道警の事件(不祥事)をもとに書かれてますが、そんなこと知らなくても充分に楽しめます。日本には警察小説として定評のある作品はいくつかありますが(再三このブログでも紹介している大沢在昌の「新宿鮫」シリーズとか)これもそれらと並ぶ傑作でしょう。まあ、四の五の言わずに読んで楽しんでもらうのが一番ですね。